「大往生したければ医療と深く関わるな」「がんで死ぬのがもっともよい」。そんな主張をする医師が京都にいる。京都の社会福祉法人老人ホーム「同和園」の常勤医を務める中村仁一氏だ。これまで数百例の自然死のお年寄りを見送ってきた中村氏から、老人医療の問題点、これからの日本人か持つべき死生観について聞いた。(聞き書き=ノンフィクション・ライター神田憲行) * * * いま日本中が全く死ぬことを忘れていますね。90歳代の親の子供たちが70歳前後で、自分たちがいつ死んでも不思議でない年齢に達しているくせに、親の死を考えていないんです。 背景にあるのは、発達したといわれる近代医学への篤い信仰です。でも治る可能性のある病気は感染症だけですよ。生活習慣病は調整することはできても、完治することはあり得ません。 「早期発見」「早期治療」といいますが、あれは完治の可能性がある感染症の結核で成功した手法なんですよ。 も