憲法の理念を大切にしてほしい――。この春、大学の卒業式で、総長や学長がそんなメッセージを相次いで放った。同志社大(京都市)で「個人主義」の大切さを説いた大谷実総長(80)の祝辞は、インターネットなどでも話題になっている。国会で改憲の議論が本格化する中、大谷総長の思いを聞いた。 大谷総長の祝辞(要旨) 私は、今日の我が国の社会や個人の考え方の基本、価値観は、個人主義に帰着すると考える。個人主義は、最近では「個人の尊重」とか「個人の尊厳」と呼ばれているが、最も尊重すべきものは「一人ひとりの個人」で、国や社会は何にも勝って、個人の自由な考え方や生き方を大切に扱わなければならないという原則だ。個人主義は、利己主義に反対し、全体主義とも反対する。 日本の憲法は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重を必要