「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」とはイギリスの元首相ウィンストン・チャーチルの言葉ですが、ほとんどの場合この言葉は、逆説的に「民主主義こそが最良である」という意味において捉えられることがほとんどでした。しかし、果たして本当に民主主義は最良の制度なのでしょうか。 民主主義は、理念としては、「知性に適用された平等主義」(『アメリカの民主政治』アレクシス・ド・トクヴィル)、実際の制度としては多数決を基本とします。有権者の多数派の支持によって代議士を決定し、代議士で構成された国会の多数派によって政治が動かされます。このような民主主義の制度が最善の決断を導く、あるいは一定程度健全に機能するためには、いうまでもなく、国民世論の多数派が健全な判断の力を有している場合に限られます。 「民主主義は、少数の政策決定者の間違った判断による暴走を食