◇揺れる性別、「どう生きるか」模索 「お父さん、本当は女なんでしょ?」。小学4年生の一人娘が無邪気に聞いてくる。感覚的に分かるのか。これ以上「パパ役」を演じ続けるのは無理なのだろうか。 神奈川県に住むエンジニア(44)は6年前、思いがけず自分の疾患を知った。学生時代の持ち物を取りに実家に戻った日のこと。子どもができて自分自身が未熟児だったと思い出し、母に何気なく聞いてみた。「母子手帳、まだある?」 母はうつむき「小さな体にメスを入れていいのか、すごく悩んだんだけど……」と小声で話し始めた。出産直後、医師に「お子さんには男女両方の特徴がある。どちらにもできますよ」と言われたという。「男がもてはやされる時代だったから、男の子にしてもらったの。女の子のほうが良かった?」。母子手帳は出てこず、母に促され実家を出た。 暗い帰り道、涙をこらえきれず、川辺に長い間座り込んだ。 思い当たることはいくつもあ