◇治療認められず退社/環境改善へ続く闘い 出勤前、鏡の前でネクタイを締める。映っているのは自分であって、自分でない。思わず目を背ける。 東京都に住むフリーターの圭さん(31)=仮名=はIT系専門学校で学んだ知識を生かし、8年前に都内のコンピューター会社に就職した。男性サラリーマンとして日々を送るうちに「本当の自分に近づきたい」との思いを抑えきれなくなり、入社3年目ごろから女性ホルモン剤を個人輸入して服用するようになった。 振り返れば「なぜ女でないのか」との疑問は小学校のころから続いていた。体の成長とともに男女両方の特徴が表れ、同級生からひどい言葉のいじめを受けた。以来、人とあまり話さず、集団の中ではなるべく目立たぬようにしてきた。 そんな気持ちを理解してくれる友人ができ、勧められたメンタルクリニックを受診すると、染色体検査で典型的な男性ではないことが分かった。「やはり完全な男ではなかったん