東京地裁は今月12日、経済産業省が性同一性障害の女性職員に、女性用トイレの使用制限などの措置を行ったことについて、違法とする判決を下した。この判決は画期的なもののはずなのに、「怖いな」と思った。トランスジェンダーへの偏見がまた吹き荒れる予感がしたからだ。 2018年にお茶の水女子大学に出生時は男性だった女性も入学できることが決まったときのことだ。作家の百田尚樹は「よーし今から勉強して入学を目指すぞ!」とツイートし、男性も女子大に入れるのだと勘違いした人々はあれこれと理由をつけて決定を非難した。 このとき、からかう男性も、自分の声が十分に聞かれていないのに少数者の声ばかり尊重されると怒っていたシスジェンダーの女性も、トランス女性がどれほどの葛藤の中で性別移行をし、すでに日常の中で数え切れないほどの妥協を強いられているのかに思いを馳せることはなかっただろうし、その必要もなかった。 かれらは日常