実母が認知症を発症してからの2年半をつづった著書『脳科学者の母が、認知症になる』。筆者で脳科学者の恩蔵絢子さんは、この暮らしの中で「認知症の母に残る、母らしさ」に気づいたと言います。脳の専門家として、娘として、その目に当事者はどう映ったのでしょう。本人に聞きました。 憂さ晴らしの日記がはじまり ——今回の著書は、脳科学の難しい本だと思っていたら、私的なエピソードも多く紹介されたエッセー風ですね 「私の洋服を母が着ていて腹が立った」とか「買ってきたお土産を母に捨てられて悲しかった」とかですね。日記がもとになっているせいかもしれません。母が何かを間違えたり言ったりするのに耐え切れなくなったときに、憂さ晴らしで書いていました(笑) でも日記をつけた理由は、もう一つあります。 インターネットで認知症を調べると、徘徊や暴力、妄想など、その人がその人でなくなってしまうようなニュアンスの、恐いイメージば