「ヤカンに触ってやけどした~」「オロナイン、塗っときなさい」 「転んで擦りむいたぁ」「薬箱にオロナインがあるでしょ」 生傷の絶えない子供のころ、誰もが一度はお世話になったことのあるオロナイン。 そんな家庭の常備薬「オロナイン軟膏」は、徳島県鳴門の小さな製薬工場で生まれた。 大塚武三郎が1921(大正10)年に創立した大塚製薬工場は、 戦前は、鳴門の塩業から出る苦汁(にがり)を使った製薬原料を作っていた。 終戦後、原料だけでなく自社でも製品を作ろうと医療用の注射液の製造販売を始め、 朝鮮特需に乗って規模拡大を果たす。 が、主力商品が注射液や蒸留水だけでは、特需が去った後、 経営が厳しくなるのは誰の目にも明らか。 父の会社に11番目の社員として入社し、47(昭和22)年に経営を引き継いでいた 大塚正士(まさひと)が製品開発に頭を悩ませていたころ、三井物産からある話が舞い込んだ。 アメリカのオロ