島尾敏雄の「死の棘」という小説を読んだ。浪人時代に予備校講師に勧められて買ったものの文庫で600ページと長く、ずっと読めずにいたが、春休みを使って読破することができた。簡単に紹介するなら、「死の棘」は作者の代表的私小説で、夫の浮気の発覚から始まる妻の不調と家族の崩壊を記録した作品である。 読み進めていくと、妻の精神異常を和らげるためにと、「私」はこんなようなことを考える。 『相馬に帰ろう』 紹介され偶然手に取ったこの本のこの文章を読んだ時、私は名状し難い不思議な感じに襲われた。 私は、相馬地区で生まれ育った。島尾敏雄も相馬地区がふるさとだったのだ。 そして、未だに故郷は原発事故の惨禍に見舞われている。 東日本大震災から6年。故郷が自然と思われた。 正直言って、私はふるさとがあまり好きではなかった。自然はたくさんあって、野馬追という伝統も素晴らしいが、若者が志を高く持つには小さすぎる街だと思
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