以下、日経「春秋」より。 ユージン・スミスという米国生まれの写真家をご存じだろうか。妻とともに熊本県水俣市に移り住み、公害病の実相を世界に伝えるモノクロの写真集を1975年に出版した。発病したわが子を抱きかかえ、入浴させる親の姿を広角レンズで切り取った一枚が胸に迫る。 ▼写真集の巻頭に、「過去の誤りをもって、未来に絶望しない人びとに捧(ささ)げる」との一文がある。第2次世界大戦の激戦地にも赴いたカメラマンの人生観が凝縮されている。彼の生涯を描いた映画「MINAMATA―ミナマタ―」があす、公開される。主役を演じるのはハリウッドを代表する俳優ジョニー・デップである。 ▼話題作の公開に先立ち、いくつかのミニシアターが公害病の記録映画を上映している。土本典昭監督の「水俣一揆 一生を問う人びと」などだ。この作品のもう一人の主役は、患者らと直接対面し、補償交渉を重ねた原因企業チッソの当時の島田賢一社
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