この着想を得るにあたって、クラーク大学の国際政治学者、シンシア・エンロー氏の著作との出会い は大きかった。彼女は、社会が軍事化というプロセスを辿っていくには、女性の分断という「策略」が不可欠であること、分断の障壁によって、女性たちが互いを知らず、関わらず、時に敵対的であることで、軍事化はスムーズに進行し得るのだと主張していたのだ。 もし、そうであるなら、なおさらのこと、「軍隊と女性」の問題を考えるにあたって、「軍隊の女性」を見つめることは不可欠なことのように思われた。軍隊に対する女性の関係を、「被害者としての女性」という一枚岩のものとして見るのではなく、自衛隊が女性たちに何かを与えつつ、彼女たちから何かを得ていくその仕組みを正確に見つめるべきだと思うようになった。 自分の背丈の2倍以上はあろうかという大型車を運転する女性自衛官は充実した職業につくことのできた喜びを噛みしめていた。何十人とい
女性の軍隊参加は、現代フェミニズムの一つの争点となっている。広く誤解されているようだが、フェミニズムを、女性の「私領域から公領域への参入」や「公領域における男女平等」要求にのみ還元することは適切ではない。それらの視点から解くならば答えは決まっている―「もっと女性兵士を」、「軍隊にも男女平等を」。 だが、フェミニズムはその誕生当初から、近代に依拠しつつ近代を超えようとする志向性を内包してきた。すなわち、自由や平等、人権といった近代的な諸概念に依拠しつつも、それらを自明のものとはせず、批判的に吟味する視座をも有してきた。だからこそ、女性の軍隊参加をめぐっても、フェミニストたちは「増えた女性兵士はそこで何をなすのか?」、「男女平等の軍隊で一体何が変わるのか?」と問い、ジェンダー平等の内実をめぐって論争を繰り広げてきたのである。 しかしながら、この映画『G.I.ジェーン』にはそのような繊細な迷いは
「軍事組織とジェンダー」―この研究のすべてのはじまりは『G.I.ジェーン』(リドリー・スコット監督、デミ・ムーア主演、1997年)という映画であった。これまで、人から「なぜ、自衛隊のジェンダー研究を?」と問われると、決まって「湾岸戦争の際に女性兵士を前線に出せと要求したフェミニスト組織(National Organization for Women 全米女性機構)があったことを知り、ショックを受けたのです」と「優等生」的返答を繰り返してきた。だが、実はこの動機は後付けにすぎない。原点は、あの映画にあったのだ。 主人公は、海軍エリート偵察部隊に女性として初めて参加した訓練兵のオニール大尉。男性でも過半数が脱落するという地獄の訓練に臨む彼女を待っていたのは、女嫌いの上司と露骨な嫌悪感をぶつけてくる同僚兵士たち。だが、彼女は決してあきらめない。女性なのだからと与えられる様々な「特別待遇」を拒否し
法の起源を探る ▼公平ではあるが無情でもある理性の秩序として捉えられてきた「法」。これに対し、ヌスバウムは、「法」 をある社会の成員が共有すべく求められている 「感情」 の表現としてとらえ、法の基盤としてふさわしい 「感情」 とはどういうものかを検討する。 ▼差別意識を助長する 「嫌悪感」 と 「恥辱感」 など少数派の排除につながる 「感情」 を明らかにし、フェミニズムや共同体主義とは異なる視点から、リベラリズムへの新たな視座を提供する大著。 目次を見る 現代のアメリカを代表する哲学者、マーサ・C・ヌスバウムの主著の一つ、Hiding from Humanity: Disgust, Shame, and the Law, Princeton University Press, 2004 の翻訳。アメリカ出版社協会(AAP)最優秀専門・学術図書賞を受賞しています。 ヌスバウムの著作は、日本で
当コーナーは、哲学者、言語学者、イスラーム学者として知られる「井筒俊彦」の入門ページです。 若松英輔氏による多角的な視点から井筒俊彦に関するエッセイをお届けします。
詳細な目次はこちらから 日本語版訳者による序言 謝辞 序論 第I 部 命題論理 第1 章 原子文 第2 章 原子文の論理 第3 章 ブール結合子 第4 章 ブール結合子の論理 第5 章 ブール論理の証明方法 第6 章 形式的証明とブール論理 第7 章 条件文 第8 章 条 …… 【著者】 ジョン・バーワイズ(Jon Barwise ) 論理学の世界的権威。スタンフォード大学Ph.D. (1967)。イェール大学,ウィスコンシン大学で教鞭を執った後、スタンフォード大学言語情報センター(CSLI: Center for the Study of Language and Information)の初代所長を務める。1990年にはインディアナ大学に迎えられた。研究分野は数学から言語学まで非常に幅広く、数学基礎論や状況理論・状況意味論に関する業績が大きい。主な著作にThe Situation in
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く