田畑などを荒らすシカやイノシシの駆除、活用が各地で課題となるなか、捕らえた獣をその場で解体し、新鮮な野生動物肉「ジビエ」にできる「ジビエ解体車」が注目されている。実証実験に同行すると、ジビエの流通量をもっと増やせる可能性がみえてきた。 長野県境にある愛知県設楽(したら)町。零下10度近くに冷え込んだ1月下旬の朝、解体処理施設「奥三河高原ジビエの森」のスタッフ鈴木秀夫さん(65)のスマホが鳴った。「シカがかかった」。猟師からだ。 鈴木さんはジビエ解体車のハンドルを握り、約40キロ離れた同県豊川市へ。標高約800メートルの山のふもとで地元猟師の大竹清次さん(84)と合流し、獲物がかかったわなに向かう。 雑木林で、立派な角が生えたオスジカが人の気配を察して暴れ回った。右前脚にくくりわなが巻き付いている。シカの胸を鈴木さんが素早くナイフで刺した。地元猟師が刺して仕留めることが多いが、この日は豊川市