出産は痛いもので、「骨が砕けて体が二つに引き裂かれる思い」であるらしい。だが「それでも産む甲斐がある」。 主人公は年配の女性たちにそう励まされる。 これ、励ましているのか、怖がらせているのかわからない。当事者ではない男の側からすると、恐怖の方が増す。産めないから甲斐も得られないわけだが、「男で良かった」と胸を撫で下ろす瞬間である。 『ザ・ボーン・ウーマン』の1シーン■妊婦を襲うのは悪魔ではなく「自分」妊娠と出産をテーマにしたホラーはいくつもあるが、この作品には過去作とは違うところがある。 それが妊婦の敵が妊婦本人になっている点だ。 名作『ローズマリーの赤ちゃん』は、邪悪な存在が妊婦を襲う、というお話だった。つまり、「妊婦VS悪」の構図だった。 だが、この『ザ・ボーン・ウーマン』の敵は妊娠した本人である。「妊婦VS彼女自身の拒絶と恐怖」という構図である。 主人公が幸せだったのは妊娠の前まで。