作品紹介・あらすじ 離婚届を提出する前日。夫との最後の話し合いを終え、自宅――ちぐさ台ニュータウンに娘の香織を連れて帰ってきた洋子。疲労感と将来への不安感でいっぱいだったが、団地の掲示板に〈メンバー募集 年齢・性別ともに不問〉という貼り紙があるのに気づく。ちぐさ台カープという草野球チームの入団募集だった。洋子は、子どもの頃、水島新司の野球マンガ『野球狂の詩』のヒロイン・水原勇気になりたかったことを思い出す。「入るから」。洋子は念を押すように香織に向かって繰り返す。「お母さん、絶対に入るからね」。 〈ちぐさ台団地の星〉と呼ばれたかつての甲子園球児、要介護の親を田舎に抱えるキャプテン、謎多き老人・カントク、そして娘の香織――草野球チームを通して交錯する「ふつうの人々」の人生を鮮やかに描ききった傑作長編小説。