なぜ人は山に登るのか。2001年当時、7大陸最高峰登頂の最年少記録を更新し、エベレスト登頂に二度成功している写真家・石川直樹の答えは、極めてシンプルだ――「好きだから」。 それは、“そこに山があるから”といった登山家や冒険家たちの言葉とは少し違い、写真家ならではの感性に基づいたもののようにも思える。渋谷・SKY GALLERYで開かれている個展『EVEREST 都市と極地の高みへ』の挨拶文に石川はこう記している。「なぜ山に登るのか。なぜまた行きたいと思うのか。いくら考えても『好きだから』という結論にしか行き着かない。こうした長期の登山遠征は、身体にこびりついた澱(おり)のようなものをすべて消し去り、自分をシンプルな状態に引き戻してくれる。行く前と後では、世界が違って見える」。登山遠征あるいは長旅は、石川にとって写真家としての視点を整え、研ぎ澄ませる重要なものでもあるということだ。 『EVE