放射線は、どうやって人の体を傷つけるのか。なぜがんになるのか。細胞レベルで低線量被曝(ひばく)の影響を見極めようとするのが、細胞の核の中にあるDNAの損傷・修復の研究だ。 顕微鏡で拡大したヒトの培養細胞の中で、複数の赤い点が輝く。「これがDNAの二重鎖(にじゅうさ)切断です」。長崎大原爆後障害医療研究所の鈴木啓司准教授(放射線生物学)が画像を指さした。切断部分で起きているタンパク質の変化を特殊な染色方法で光らせている。 二重鎖切断とは、二重らせん構造のDNAが一度に2本とも切れる現象だ。鈴木氏の研究によると、低線量の100ミリグレイを当てた細胞では二重鎖切断が4カ所程度で発生。10倍の1グレイでは40カ所程度に増え、線量と切断箇所数はほぼ直線的な比例関係だった。 被曝前と同じ つまり、人の体は線量に応じて被曝のダメージを受けることになるが、話はそこで終わらない。細胞は、DNAを切断されても