ある学生が書いた卒業論文が話題になっている。「呼び覚まされる霊性の震災学」(新曜社)に収録された「死者たちが通う街 タクシードライバーの幽霊現象」だ。【石戸諭】 東北学院大の工藤優花さんが宮城県石巻市のタクシー運転手が実際にあった幽霊について聞き取り、まとめたものだ。 津波被災地で幽霊をのせたタクシー運転手がいる。そこだけが切り取られ、「幽霊はいる」「非科学的なもので、論文とはいえない」といった声がネットにあふれた。 卒論を指導した社会学者の金菱清教授は、苦笑混じりに語る。 「幽霊をみることもよりも、幽霊現象を通して死生観、『死者』との向き合い方を考察することがこの論文の主題なのに」 金菱さんはフィールドワークを専門とする社会学者だ。 大学進学を決めた1995年に、阪神淡路大震災を経験している。その時、疑問を抱いたのは目線の位置だった。崩れ落ちる高速道路、被害があった神戸市内。強調されたの