珍しい病気や奇妙な症状は人間の個人差と同じで数限りなく存在している。 その中には、ただ珍しいだけではなく、私たちが「正常」や「健康」と信じている価値観を揺さぶるものがある。 自分の手や足が余分で不快な異物と感じられて、それを切り落とすことを心から望む「身体完全同一性障害(BIID)」という病気はその一つだろう。 私は授業の時、この病気の方を取材したドキュメンタリーDVD(メロディ・ギルバート監督『完全(Whole)』サンダンス・チャンネル)を見せて感想を聞くことにしている。 人のために尽くしたいと思う優しい気持ちの学生たちはとくに、自分の体を傷つけて障害者になることを切望するBIIDの人々の姿を見てなんとも言えない表情を示す。 私自身はこうした訴えの患者さんに病院で出会ったことはない。 だが、この病気についても紹介している本が出版されたので、ひょっとしたら日本でも増えてくるのかもしれない(