日本社会を根底から支える社会インフラとなる可能性がある準天頂衛星システム。だが、その誕生までの経緯は、シーズとニーズの両方が十分に考えられたものではなかった。企業や国家、さらには官庁の思惑に何度も左右され、用途も二転三転した。 実際のところ、「日本にとって本当に必要な測位衛星システムは、準天頂衛星システムだったのか」という点では、現在も疑問が残っている。今回は、準天頂衛星システムの開発が決まるまでの1990年代からの経緯を解説する。 お手本となった旧ソ連のモルニヤ軌道 日本上空に長時間滞留する準天頂軌道には、技術的なお手本が存在した。旧ソ連が高緯度地方の衛星通信のために考案・利用した「モルニヤ軌道」である。 通常、通信衛星は赤道上空3万6000キロメートルの静止軌道を利用する。静止軌道に入った衛星は、地球の自転と同期して24時間で地球の周囲を回る。このため、地上からは空の一点に静止したよう

