乳児の陰茎切断医療過誤事件 ＝バイオエシックスからの考察＝まえがき 割礼（circumcision）という風習は、日本には輸入されておらず、知らない人が多いのではないかと思われる。筆者が一九五七年に渡米して、ニューヨーク州の病院の産婦人科の主任レジデントとして働き始めた時に、割礼の手術を初めて知り、多数例の男児の割礼手術を行ったものである。出生後数日の新生児に実施すれば、男児の割礼手術は難しい手術ではなく、無麻酔で完全に実施できるものである。 しかし、生後数ヵ月後に実施する割礼手術では、麻酔下で電気焼却器（electrocautery）を使用して包皮を切除する際に、過って陰茎を切断（amputation of penis）してしまうという医療過誤事件が起こっているのである。 過って陰茎を切断した場合には、緊急止血処理後に尿道を確保しておき、陰茎再建手術（phalloplasty）を行って男児として育てる場合と、男性生殖器を形成手術によって女
