『凍る大地に、絵は溶ける』で、第29回松本清張賞を頂きました。天城光琴(あまぎみこと)です。 正直タイトルだけ聞いても、一体何の話なのか、そもそもジャンルは何なのか、全く想像が付かないと思うので、ごく簡単に作品紹介をさせていただければと思います。 私は主にファンタジーを書いていますが、魔法も妖精も出て来ません。架空の時代小説のようなものです。 『凍る大地に、絵は溶ける』の舞台は、農耕民族と遊牧民が共存する、稲城国(いなきのくに)という王国です。二つの民族は、過去に衝突した過去を持つものの、今は国土の北と南に住み分けておおむね平和に暮らしています。遊牧民・アゴールは山羊を養いながら、冬の間は違う国にある牧草地に移動しますが、農耕民・稲城民(いなきのたみ)は一年中同じ土地で暮らしています。 そこに、ある日突然――人々の目が、動きを捉えられなくなるという異変が襲います。 腕をどんなに振っても透け