春、新たな一歩を踏み出す季節。児童養護施設の子どもたちは原則18歳で退所し、自分で生活費を工面する。学費まで手が回らず、進学をあきらめるケースも多い。返済不要の奨学金の充実が求められる中、児童養護施設出身の11人が給付型奨学金に支えられ、夢へと歩き出した。 「自分を救ってくれた先生のようになりたい」。愛知県の県立高校を卒業した長谷川俊介さん(18)は、中学教師を目指して大学へ進んだ。 中学生の時、父が病気で働けなくなった。帰宅しても食べるものがなく、1日の食事が給食だけのことも。いつも、おなかがすいていた。でも、「貧乏だと思われたくない。普通の子に見られたい」。ラグビー部の練習にも打ち込んだ。 ある日、学年主任の男性教師から「元気ないな。どうしたんだ」と声を掛けられた。「やっと頼れる人がいた」。長谷川さんは、せきを切ったように話し出した。家庭のこと、進学したいこと……。 高校進学後、所持金