人間は見た夢のほとんどを忘れます。夢日記をつけている人でも、記憶に残っている夢は実際に見た夢のごく一部です。夢は忘れるのが自然なんです。むしろ覚えているほうが例外的でしょう。でも、鮮明に覚えている夢がいくつかあるはずです。それについての話です。 怖いなら以下は見ないように。以下は自己責任です。 あなたが今まで見て「覚えている夢」をぼんやり思い出してください。 以下にわたしが１２のリストを書きます。 そのリストにあるものが「夢に出てきた記憶がある」なら、その番号を覚えてください。 夢に一度も出てきていないなら、それは気にしなくて大丈夫です。 何のリストか、はあとで説明します。 【リスト】 １：心臓の形をした双子の石 ２：蝶とその羽根を切るのこぎり ３：金属の蒸気のビン ４：ジェットコースターのレールを歩くこと ５：火の海の中に巨人の骸骨 ６：何もない空間に十字の線 ７：動く歩道で振り返る ８

少子化対策の一環として、国がVR赤ちゃんシミュレーターを作成した。したんだからどうしようもない。これは赤ちゃんの世話をVR空間で体験させるというもので、若い世代がもはや赤ちゃんのいる空間というものにリアリティを感じなくなっているという問題をカバーするのが目的だ。 じっさい、一理はあった。たしかに自分の弟や妹が赤ちゃんとして家の中にいたという経験者は少なくなっているし、親戚の子でそれを体験したり、祖父母からそういう話を聞くことも少ない。要するに子供という存在が「他人事」になっている。それは事実のようだ。 国が制作した赤ちゃんシミュレーターは、かなりの予算を費やして細部にリアリティを持たせている。あくまで育児に興味を持たせることが目的なので、実際の育児にともなう不快な要素はかなり軽減されているが、それでも経験のある企業の参画によって、この種のプログラムにしては出来のいいものになった。 始めは国

♯俺は２０３５年の未来からこれを書いている。 ♯たぶん信じないだろうが、俺は未来のハッカーで、この時代のウェブ作家の脳を乗っ取ってこれを書かせている。 ♯本当はもっと影響力のある作家を乗っ取りたかったが、脳の言語野にクォンタムチップが埋まってるやつがあまりいなかったのだ。チップが埋まってるやつではこいつがいちばんマシだった。 ♯俺のハッキングによって「まくるめ」は行頭にシャープのついた文章を認識できず無意識に読み飛ばすようになっている ♯これを読んでいるみなさん。ここに書かれている「スケベスパイラル」現象は実際に起こる ♯このサイクルを止めてくれ。 ♯誰でもいい。止められそうなやつ、グーグルの関係者でも、CIAでも、バチカンでも、この際、怪しいとこでもいい。この未来を話してくれ。 ♯みんながキウイフルーツに欲情するようになる前に！ AIが生成する絵が人間をバグらせ、絶頂させまくるようになっ

- Illustrator かぼちゃ 「シーフと一緒に世界を救ったってのは、コンプライアンス的に色々とマズいんだ」 そんな意味の分からない理由で勇者パーティを追い出されたシーフのカナタだったが、故郷へ帰ろうにも、そこは魔王の城に最も近いサイハテの街。 宿や食事代は超高額、街を一歩出れば強敵モンスターだらけ、しかも財布の中身は無一文……。 ――そして、この世界は滅ぶ運命にある"救いのないセカイ"だった。 だが、そんな絶望的状況での「水の精霊エレナ」との出会いが、彼を……いや、世界の運命を大きく変える事になる。 カナタに課せられた使命はただ一つ。 それは、かつて誰にも知られる事無く悲劇の結末を迎えた者達を全員救い、この世界が平和を迎える「真のエンディング」へと辿り着くこと！

「……こりゃよくできたＶＲだな」 「どうしてわたくしがあの田舎娘に――！？」 乙女ゲームの悪役令嬢になってしまった現代日本の大学生『わたし』と、 わたしに押し出されて主人公シャーロットの中に入ってしまった悪役令嬢『アイリーン』。 わたしたちが元（の世界）に戻る方法はただ一つ。 悪役令嬢アイリーンとして、『主人公』となった元・悪役令嬢と協力し、物語をTRUE ENDへ導け！ ゲーマー大学生と悪役令嬢の受難の話。 （左イメージイラスト：猫月ユキさん／https://twitter.com/yukinkzk　書籍表紙イラストレーター：志田さん） ※第1回ノベルアップ＋小説大賞にてノベラ賞をいただきました。ありがとうございます。 7/22（水）ＨＪノベルスさんより発売します。よろしくお願いします。

「ふうー。魔法ってすげえなあ」 ジャケットの男も傷が癒えたようだ。 わざとらしい仕草でベッドから起き上がり、ジャケットの汚れを点検し始めたりした。 「ありがとう。感謝しとくよ」 「むしろ、あの子によく感謝したほうがいい」 「え？」 「かばってもらったんでしょう？　あの子に」 ヴァスはリクを見やる。 「もう一発喰らってたら、折れたあばらが肺に突き刺さってたかも」 「そ、そうか」 「あっさり治ったから勘違いしてるかもしれないけど、わりと死ぬ可能性はあった」 「まじで」 「マジ」 「ほんとにマジ？」 「……あなた、もと冒険者なら、そんなのよくある話だって分かるでしょ？　浅く見えた傷で死んだ仲間、いなかった？」 「…………言いたいことはわかった」 男はそう言われて真剣な表情になった。 おどけた雰囲気は消え、リクのほうをじっと見ていた。 ヴァスはうなずいてから、筋肉質の男のほうを向く。 「あんたも、

冒険と英雄の時代は、リクが生まれたときにはもう終わっていた。 平和になった世界では、武器も魔法もすべて違法。 かつての英雄は、法律で牙を抜かれ、りっぱな社会不適合者と化した。 そんな世界で。 最強の勇者夫婦の子供として生まれたリク。 彼を監視する幼なじみの法律家アルル。 二人の合法的ファンタジー。 リクは絶大な潜在能力を持つ。 冒険と人助けにあこがれるが、理不尽な法律にしばられる。 彼の武器は「世界の半分を手に入れる」という「ある能力」。 アルルは違法行為をした勇者を完全に無力化できる。たとえ相手がどんなに強くても。 ただし戦う力はない。 彼女の目的は、リクが「ある能力」を自覚しないよう防ぐこと。 平和な日常が続くはずの世界に、消えたはずの過去の奇病がよみがえる。 リクはこの土地を救わなければならない。 かつての最強の英雄たちに接触し、 その中から犯人を見つけ、 倒すのだ。 しかも「合法的

一風変わったVRゲーム『Monsters Evolve』があった。モンスターを狩るのでもなく、モンスターを使役するのでもなく、モンスターになりきるというコンセプトのゲームである。 妙な人気を得たこのゲームのオンライン対応版がVRMMORPGとして『Monsters Evolve Online』となり、この度発売された。オフライン版にハマっていた吉崎圭吾は迷う事なくオンライン版を購入しプレイを始めるが、オフライン版からオンライン版になった際に多くの仕様変更があり、その代表的なものが初期枠の種族がランダムで決まる事であった。 ランダムで決められた種族は『コケ』であり、どう攻略すればいいのかもわからないままゲームを進めていく。変わり種ゲームの中でも特に変わり種の種族を使って何をしていくのか。 人間のいないこのゲームで色んな動植物の仲間と共に、色んなところで色々実験してやり過ぎつつも色々見つけたり

【書籍化します！】 「このスキルを使えば俺めっちゃ金持ちになれるんじゃないか？」 社畜として酷使され続けた尼田士郎はブラック企業を辞め、祖母の家へと引っ越した。 引っ越し先が異世界に繋がっていることを知った士郎は、日本の物を異世界に持ち込んで商売することを思いつく。 これは等価交換スキルで異世界の通貨を日本円に替え、どんどん金持ちになっていく心優しい男の物語。 小説家になろう様にも投稿しています。

かつて勇者がいた。今もいるがな。 勇者あるいは英雄、救世主だとか恩寵者。言葉は何だっていい。 それらの呼び名にふさわしい者のことだ。 神に遣わされた者、運命に選ばれた者、歴史に残るべく生まれた者。 どの国にもそういった意味の言葉があったし、それにふさわしい者がいた。 たとえばこの私がそうだ。 私も勇者のひとり。 ……たぶん。 たぶんそうだと思う。 そうなんじゃないかな。 まあちょっと……いかん。自信が揺らいできた。 というのは、昔は間違いなくそうだったのだが。 当節ちょっと色々あるのだ。 今の私は、少なくとも勇者でござるとふんぞり返って、騎士たちが私に敬礼するのが当然となるような身分ではないのだな。 若い娘が私と目が合っただけできゃあきゃあと騒いでいたのも、いまは昔のことである。 昔はそうだったんだ。ほんとだぞ。 とはいえ今は違う。身の丈もずいぶん縮んでしまったし。 毛づくろいは欠かせない