囀。金木犀の事 四つ。 常秋の島がある。春と夏と冬が訪れない 一年中秋の季節の 金木犀と秋桜が咲き乱れる夢の様な島だ。 日が差すうちは暖かく過ごしやすいが日が暮れると薄寒く 寂しく物悲しい気持ちになる島だ。 島の住民になると金木犀の苗を贈られる。庭に植えると あっという間に根付きモリモリ育ち花咲かす。 植えられた金木犀はすこやかに育ち 樹齢数百年を超えるまで枯れる事はない。金木犀と紐付けされた住人も 金木犀が枯れるまで死ぬ事はない。死ぬ事ができなくなる。 常秋の島は咲き乱れる金木犀の樹海に長命の者が棲む。 長命の者は 四六時中金木犀の香りを嗅ぎ続ける為 静かに深く 気が狂う。 ◆ かつて実家のあった町は子供が生まれると金木犀の苗木をくれて 実家には僕と僕の双子の兄の二本の金木犀が植えられ無造作に大きく育ち。けれども実家の解体の際 僕自らが 二本の金木犀を伐り殺した。 以来 僕の周り 年がら