『ウパデーシャ・サーハスリー』: (千の教説、シャンカラ著)最近岩波文庫でヒンズー教唯名論の古典が再刊されたので、以前書いた関連著作の書評を採録します。 ☆図 インド哲学七つの難問 (講談社選書メチエ) (単行本) 宮元 啓一 (著) 哲学における失われたミッシングリンクとして、今後重要となるであろう仏教以外のインド哲学(ヒンドゥー教側)の紹介である。 類書よりも本書をわかりやすいものにしている、実在論のヒンドゥー教側と唯名論の仏教側の論争という構図は、著者も言うようにおおざっぱな位置づけとしては有効だろう。 それは中国において老子と孔子が、西欧哲学においてスピノザとカントがあるようなものだ。 ただ、ヒンドゥー側に立つ著者には少し「外道」としてのコンプレックスがあり、それが参考文献の紹介の少なさに加えて本書の欠点となってしまっている。しかし、それを補って余ある貴重な論考でもある。 特に、(