「涙とともにパンを食べたものでなければ人生の味はわからない」 仰々しくゲーテの言葉を冒頭に持ってきて申し訳ないです。ふと思い出したので、メモ程度に書いておきます。どういった話かというと、親父と交わした言葉についてです。これまで僕が親父に対してどういった感情を抱き、そして今に至ったかを、つらつらと書きます。 僕が19歳の頃だったと思う。どういったことが発端かは覚えていないけれど、僕は深夜お袋と口論をしていた。そして、その口論の話の中で親父が出てきた。僕は親父のことを確かこう吐き捨てた。「親父なんて、死ねばいいんだよ。あんなロクでもない野郎は。アイツがオレに何をしてくれた?オレは今まで何もしてもらったことはない。オレは自分の力でここまで来たんだ!」 あなたは何も分かっていない、とお袋は僕に言った。「台所を見てごらん。今日お父さんはあなたのために刺身をおろしていたんだよ。手に怪我までして。それを