文 フミコフミオ 父の生前、一度だけ二人きりで買い物に行ったことがある。父が亡くなる直前、1991年頃の春先の出来事だ。その頃の僕は女の子の目線を意識してばかりの高校生で、本当はメインストリートで流行っているものが気になって気になって仕方なかったけれども、あえてそこに背を向け、米国英国のロックンロールミュージックを聴き、ゲーセンでドルアーガの塔やゼビウスやドラゴンバスターといった時代遅れのゲームをプレイしながら、「ああいうの、ダサいよね。大衆に迎合しすぎ。イモだよね」と言っているような偽サブカルの痛いヤツだった。本音をいわせてもらえば、僕もジメジメしたゲームセンターを飛び出しメインなストリートで太陽の下で女の子と楽しく遊びたかった。 Photo by Kai Engel 何のきっかけで父と二人で買い物に行く流れになったのか覚えていない。でも僕は「お前にいいものを買ってやる」という父の笑顔を