撮影:斎藤卓行 私はさやか。 34歳の独身OLだ。 これは私の10年前くらいの話。 私は小さい時から一人っ子で、特に前へ前へな人間でもなかったためか、これといった友達はずっといない。 コミュニケーションを取るのはずっと苦手だ。 小中高大、なんの陰も出さずにただただ平凡に生活していた。 目立ってもなければ、いじめられるような存在にすらならなかった私は、いつだって人間の平均だった。 そんな私も23歳の時に、東京に上京して、一人暮らしを始めた。 母はものすごく心配していたが、私はなんの苦労も味わったことがなかったので、父は一人暮らしには賛成だった。 父はいつも「さやか、お前は恵まれて生きてきた。世界は広いぞぉ。怖がらずにいつも冷静でいなさい」と言ってきていた。 たしかに私は、怖い物知らずというか、危険な体験もなく常に親に守られていた。 自分でも私は世間知らずだと思っていた。 そんな3月のまだまだ