ブックマーク / magazine-k.jp (98)

  • 表現の自由を支える「小さな場所」たち

    このエディターズノートはいつも月初に書くことにしているのだが、今月はあまりにも考えなくてはならないことが多すぎて、一週間以上もずれ込んでしまった。 先週はあいちトリエンナーレ2019を見るため、名古屋市と豊田市を駆け足でまわってきた。参加作家の一人である「表現の不自由展・その後」の展示内容に対する批判や抗議、さらには展示続行を困難にさせる職員等への脅迫的言辞もあり、わずか開催3日で同展が中止に追い込まれた経緯は、報道などを通じてご存知のとおりである。 「表現の不自由展・その後」という企画展のタイトルに「表現の自由」という言葉が含まれていたこともあり、展示中止の経緯は「表現の自由」をめぐる議論を喚起した。この言葉には多様なニュアンスが含まれるが、第一義に意味するのは日国憲法第21条で保証されている、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現」の自由であろう。これらに対しては、事前であろうと

    表現の自由を支える「小さな場所」たち
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/09/10
    あいちトリエンナーレは「成功」している。
  • 献本の倫理

    元『ユリイカ』編集長の郡淳一郎氏が、4月22日、自身のTwitterにて「「御恵贈(投)頂き(賜り)ました」ツイートの胸糞わるさ」から始まる「はしたない」御礼ツイートを批判したことで、献という出版界の慣習に多くの関心が集まった。 郡氏によれば、この種の御礼ツイートには「わたしには、「皆の衆、俺(私)はコネがあるんだぞ、大事にされているんだぞ、偉いんだぞ」というメッセージ」しかない。つづけて、「商業出版されたは商品なのだから、それをタダでもらったと吹聴するのは、はしたないことだと、なぜわからないのか。黙ってを読むことが中抜きされていると感じる」と憤りを露わにする。 はじめに断っておけば、私は郡氏の献観、また書物観や編集観にまるで共感しない。詳しくが後述するが、私が著者として他者に献するさい、その人にもっとも期待しているのはのPRであり、賞讃でも批判でも話題になること、注目が集まる

    献本の倫理
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/04/27
    フェアネスのためならどんな「はしたない」ことだってする。
  • 闘う図書館と情報の自由――ライブラリー・フリーダム・プロジェクト

    近年、インターネットの普及や書籍等の電子化に伴い、図書館の社会的役割が大きく揺らいでいるように思われる。今や図書館の一般的イメージは、「無料貸屋」、あるいは最悪「コーヒーショップの添え物」といった感じではないだろうか。私は子供のころから図書館のヘビーユーザーであり、今の自分の6、7割方は図書館で借りたやCDから学んだ知識が形作ったと思っているので、寂しいことである。 図書館もさることながら、図書館を司る司書もまた、一般の利用者からは縁遠い存在だ。の整理係として以外、司書の具体的な職掌を知らない人が大多数ではないだろうか。最近では自治体等の財政難もあって、司書の地位も不安定化しているようだ。 こうした傾向は世界的なもののようだが、最近アメリカでは、図書館、あるいは図書館司書に従来とは違った役割を見いだす動きが出てきている。その一つが、Library Freedom Projectだ。2

    闘う図書館と情報の自由――ライブラリー・フリーダム・プロジェクト
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/02/27
    アメリカの図書館というのは単に本を貸す場所ではなく、利用者の知的自由を守る場所。
  • 第1回 ブックオフという「図書館」の登場

    二種類の「古屋」から考える 突然だけれど、「古屋」といわれたとき、あなたの頭にはどういった風景が思い浮かぶだろうか。 薄暗く狭い店内にぎっちりとが重ねられ、店の奥ではこわそうな店主のおやじがぶすっとした顔で座っている―― あるいはこうだろうか? 蛍光灯で明るく照らされた店内にはぴっしりとが並べられ、そこかしこにいる制服を着た店員がにっこりとした顔で呼び込みをしている―― 多くの人にはこの二つの光景のどちらかが思い浮かんでいるのではないだろうか。まったく異なるこの二つの古屋は、そっくりそのまま「ブックオフ以前」と「ブックオフ以後」の古屋に対応している。日を代表する古屋チェーンである「ブックオフ」。「新古書店」ともよばれる矛盾した呼び名があるその古屋は、それほどまでに日の古をめぐる風景を変え、そしてそれは古の風景だけではなく、そのものをめぐる風景をも変えたのだ。 どう

    第1回 ブックオフという「図書館」の登場
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/02/15
    本来は出会わなかったかもしれない人と本が「安さ」によって結びつくきっかけがある。
  • いま本をめぐる環境は、とてもよいのではないか

    あけましておめでとうございます。今年で「マガジン航」は創刊から10年を迎えることになります。 昨年は下北沢に誰でも来ていただける「編集室」をあらたに設けました。今年はこの場所を拠点に、ウェブメディア以外にもいろいろな活動をしてまいります。今後も「マガジン航」をどうぞよろしくお願いいたします。 *   *   * この年末年始は仕事を離れて自分の読みたいだけを読んで過ごした。10年前にこのサイトを立ち上げたときに漠然と思い描いていたような、電子化へと急激に舵を切るような「の未来」は、2019年の現在もまだ現実には訪れていない。けれどもいま私たちが享受している書物をめぐる環境は、読者という立場に身をおくかぎりは、きわめて快適といっていいだろう。 仕事納めのあと、買ってからしばらく積んであったの山を崩し、手始めに野崎歓『水の匂いがするようだ――井伏鱒二のほうへ』(集英社)にとりかかった。一

    いま本をめぐる環境は、とてもよいのではないか
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2019/01/10
    本が本を連れてくる。
  • ローカルな場所とデジタルを結びつける « マガジン航[kɔː]

    今月から「マガジン航」はリブライズとのコラボレーションを始めることにした。ご存知の方も多いと思うが、リブライズは「すべての棚を図書館に」を合言葉に、と場所と人を結びつける仕組みだ。わかりやすく言えば「図書館ごっこ」ができるサービスである。バーコードリーダーとFacebookのアカウントだけでの貸し借り(チェックイン、チェックアウト)が簡便にできるため、すでに1700ヶ所以上の場所にある60万冊近いがリブライズに登録されている。 じつはリブライズの開発・運営をしている一人である河村奨さんは、私の住んでいる町で、下北沢オープンソースCafeという面白いスペースを営んでいる。リブライズというサービスが開始されたときすぐに会いに行き、それ以来、折に触れてやウェブ、コンピューティングについて、いろんな話をしてきた地元の仲間でもある。 リブライズの面白いところは、のあるリアルな場所を「ブッ

    ローカルな場所とデジタルを結びつける « マガジン航[kɔː]
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2018/11/02
    場所の力によって、グローバリゼ―ションをある程度まで中和することはできると思う。
  • 出版業界は沈みゆく泥舟なのか

    まるで沈みゆく泥舟のようではないか、と思う。日の出版業界のことだ。 このコラムは毎月、基的に月初に公開することにしている。毎月更新される小田光雄氏の「出版状況クロニクル」や、ジュンク堂書店の福嶋聡氏の「屋とコンピュータ」といったコラムを意識しつつ書いているのだが、これまではできるだけポジティブな話題を見つけるようにしてきた。でも今月はどうしても筆が進まず、公開が週をまたいでしまった。いまだに何を書いてよいやら、という諦めのような境地にさえなっている。 「文字もの」電子書籍は未だに紙の4% そうした思いを抱いた理由の一つは、先月に相次いで公開された出版市場統計である。 まず、インプレス総合研究所から2017年の日電子書籍と電子雑誌の市場規模が発表された。同研究所の調査によると、昨年の電子書籍市場規模は前年比13.4%増の2241億円、電子雑誌市場規模は前年比4.3%増の315億円。

    出版業界は沈みゆく泥舟なのか
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2018/08/07
    「文字もの」電子書籍は未だに紙の4%。
  • ロジスティックス革命と1940年体制の終わり

    「マガジン航」のエディターズ・ノートは毎月1日に公開することにしているのだが、今月はどうしても考えがまとまらないまま最初の週末を越えてしまった。理由はほかでもない、出版物流の限界がはっきりと露呈してきたからであり、それを前提とした出版産業の未来をポジティブに考えることが難しいと思えたからである。 取次自身が認めたシステム崩壊 出版関係者の多くが読んでいると思われる二つのネット連載が、この問題に触れている。まず小田光雄氏の「出版状況クロニクル」は6月1日の記事(第121回)で「新文化」(4月26日付)や「文化通信」(5月21日付)などが伝えた大手取次のトーハン、日販の経営者の生々しい発言を紹介している。 「出版業界は未曽有の事態が起こりつつある」(トーハン・藤井武彦社長) 「取次業は崩壊の危機にある」(日販・平林彰社長) こうした大仰な発言の背景にあるのは、取次という出版流通ビジネスの屋台骨

    ロジスティックス革命と1940年体制の終わり
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2018/06/10
    これからの本屋。
  • コミュニティ(Ours)の編集とデザイン

    クラウドファンディングによる出版プロジェクトが進められていた、故・渡辺保史さんの遺稿集『Designing Ours:「自分たち事」のデザイン』がようやく完成し、先週末に私の手元にもが届いた。このは2011年から2012年にかけて渡辺さんが執筆していた単行用の未定稿を編集し、事前予約制により限定出版したもので、一般向けに市販されることはないという。そこで渡辺さんと多少なりともご縁があった者として、このに込められた故人の思いを受け止めつつ、自分なりの感想を綴ってみたい。 「情報」のデザインと編集 渡辺保史さんは、「情報デザイン」という言葉を自身の活動の中心に置いていた研究者/教育者である。最初に渡辺さんとお会いしたのは、彼がフリーランスのライターとして活動をしていた頃で、私は1990年代に刊行されていた最初の「ワイアード日版」(現インフォバーンの小林弘人氏が編集長)の編集部にいた。

    コミュニティ(Ours)の編集とデザイン
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2018/04/03
    メディア+コミュニティ=情報デザイン。
  • 第4回 デジタル時代はマンガ編集者を変えるか?

    旧来のマンガ編集者の役割 長年、日のマンガ業界、とくに雑誌では、マンガ家と編集者、あるいはマンガ家と原作者、編集者がタッグを組んでひとつの作品を生み出してきた。マンガ家と編集者は企画について話し合い、編集者は必要な資料を集めたり取材の手配をしてマンガ家をサポートする。 「新連載でボクシングの6回戦ボーイを主人公にしたい」というマンガ家・ちばてつやの希望をきいた「週刊少年マガジン」の担当編集者・宮原照夫が、原作者の梶原一騎を紹介し、そこから名作『あしたのジョー』が生まれたというエピソードはあまりにも有名だ。 編集者とマンガ家がアイディアを出し合い、マンガ家や原作者がそのアイディアをシノプシスにまとめあげて、ネーム原稿(セリフと大まかなコマ割りが入った状態)が上がれば、マンガ家の仕事場や近所のファミレスなどでさらにブレスト。マンガ家は、編集者のダメ出しをもとに修正を加えて、OKが出ればいよい

    第4回 デジタル時代はマンガ編集者を変えるか?
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/08/25
    誰かがいいトスを上げないと、アタッカーはスパイクできない。
  • 八戸ブックセンター訪問記

    昨年暮れに青森県八戸市にオープンした八戸ブックセンターのことがずっと気にかかっていた。あまり聞いたことのない「市営の書店」だということ、私の住む東京・下北沢で「屋B&B」を経営している内沼晋太郎さんがそのディレクションを担当していること。そしてなにより、ネット等の記事を読んだだけでは、あまり明瞭なイメージが浮かばないこと。以上が理由である。 これは現地に行ってみるしかないと思っていたところ、私が客員で教えている大正大学の地域構想研究所が発行する「地域人」という雑誌から、ローカルメディアの特集を組むというので声をかけていただいた。誌で「ローカルメディアというフロンティアへ」を連載中の影山裕樹さんや、内沼晋太郎さんとともに座談会に出ることになり、幸いにも、その流れで八戸ブックセンターを訪れることができた。 まもなく刊行される『地域人』の次号に八戸ブックセンターについて寄稿した記事が掲載され

    八戸ブックセンター訪問記
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/06/02
    「読み」「書き」の循環を生み出す場。
  • 台湾のCulture and Art Book Fairに参加して

    2017年の4月1日〜2日、台湾・台北市にある華山1914文創園区で、Culture and Art Book Fair in Taipei(以下、CABF)が開催された。香川県のローカル出版社・瀬戸内人の編集者であり、今回、出店者として参加した立場から、このブックフェアと台湾の出版を中心にしたカルチャー・シーンについて、見聞きしたことや感じたことをレポートしたい。 台湾ではじめての試みとなるこののイベントは、CABF実行委員会が主催している。松山国際空港近くのエリアでライフスタイルショップなどを展開するFUJIN TREE GROUPの執行長・小路輔さん、香川県高松市でBOOK MARUTEを営む小笠原哲也さんの呼びかけで、出版社、ギャラリー、アーティストが日から約40組、台湾からは約10組参加した。京都の出版社・赤々舎、名古屋の書店ギャラリー・ON READING、写真家のかくたみ

    台湾のCulture and Art Book Fairに参加して
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/05/02
    世界性・普遍性の感覚を持ちながら、ローカルで考えること。
  • 北海道の読書環境を支えるためのネットワーク、「ぶっくらぼ」スタート

    幸福から遠い北海道で 2017年の1月末のこと。北海道の函館市について「魅力度が第1位」と「幸福度が最下位」という正反対の結果が相次いで公表され、全国ニュースでも取り上げられた。魅力度は、民間コンサルタント会社が調査。全国の主要な1000市区町村を対象にインターネット上で「観光に行きたいか」「特産品を買いたいか」など77項目を質問し、3万人からの回答を点数化したもので、函館市がトップとなった。ほかにも札幌市や小樽市、富良野市と、トップ10に道内から4自治体がランクインしている。 一方、民間シンクタンクが人口20万人以上の中核市のうち一部を除く42市で、人口増加率や財政の健全度などの基指標に加え、健康・仕事・生活・文化教育の5分野で、全39項目を調査。「幸福度」として集計分析したところ、函館市が最下位となった。さらに悲しむべきことに同市は「健康」分野の評価がとりわけ低く、自殺者数・生活保

    北海道の読書環境を支えるためのネットワーク、「ぶっくらぼ」スタート
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/03/22
    「図書に関する問題」は、ツタヤ図書館問題やアマゾン・取次問題、電子書籍の普及問題などとは次元が異なる。
  • ノンフィクション作家はネットで食えるか?

    ノンフィクションの書き手が発表する場(雑誌)が少なくなっているのは、今に始まったことではない。書くメディアの確保とともに、どのように調査・取材のための資金を調達するのかが課題になっている。 この10年近く、少年犯罪や犯罪被害者遺族の取材を中心に取材、執筆を重ねているノンフィクションライターの藤井誠二さんの場合、どのような模索や葛藤があるのか、お話をうかがった。 藤井誠二さんの場合〜有料メルマガをはじめた理由 2016年はテレビ情報誌「テレビぴあ」(ウィルメディア)、情報誌「クーリエ・ジャポン」(講談社)、30代の女性向けファッション誌「AneCan」(小学館)、「小学二年生」(小学館)などが休刊した。一方、新しい雑誌が誕生したという目立ったニュースはなかった。現在は、原稿料をどう得るのかだけでなく、取材費の確保も書き手自身の課題となってくる。以前よりもマネタイズ、マネージメントへの関心が出

    ノンフィクション作家はネットで食えるか?
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/02/16
    ネットではやはり、固有の知名度と瞬発力が必須。
  • 本屋とローカリティと切実さと

    出版科学研究所の調査による「2016年出版物発行・販売概況」が『出版月報』1月号に掲載され、書籍市場・雑誌市場・電子出版市場(電子書籍、電子雑誌、電子コミックの三分野)の現況が明らかになった。 同調査によれば、2016年の書籍と雑誌(コミックスを含む)を併せた紙の出版物の販売金額は1兆4,709億円。うち書籍が7,370億円、雑誌が7,339億円とほぼ同程度ではあるが、僅差とはいえ書籍が雑誌を上回った。これは同調査では1975年以来、41年ぶりの出来事だという。 他方、電子出版市場は1,909億円まで成長し、紙と電子を併せた出版物販売金額は1兆6,618億円と前年比99.4%の微減となった。ことに成長著しい電子コミック(1,460億円、前年比27%増)、電子雑誌(191億円、前年比53%増)が牽引役となったかたちだ。しかし、マンガを除いた文字物の電子書籍は前年比13%増の258億円にとどま

    本屋とローカリティと切実さと
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/02/02
    ローカルとは「地方」という意味ではなく、そこの場所でしかありえないということ。
  • 「読む」「書く」「編む」の未来

    新年あけましておめでとうございます。おかげさまで「マガジン航」は今年で創刊から8年目を迎えます。の未来を模索するささやかなメディアをここまで長く続けられたのも、寄稿者および読者の皆様のおかげです。あらためてこの場を借りて御礼申し上げます。 * * * この年末年始に読んだで印象深かったのは、町会や『屋図鑑』などの仕事で知られる空犬太郎さんが、東京創元社の編集者として長く活躍された戸川安宣さんの個人史をオーラル・ヒストリーとして聞き取りまとめた『ぼくのミステリ・クロニクル』(国書刊行会刊)でした。1947年生まれの戸川さんが幼少時からの読書史を語った「読む」の章、1970年に東京創元社に入社して以後の編集者人生が語られる「編む」の章、そして吉祥寺にあったミステリ専門書店「TRICK + TRAP(トリック・トラップ)」に関わった日々を綴った「売る」の章、それぞれ読み応えがあり、思わず

    「読む」「書く」「編む」の未来
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2017/01/05
    「読む」ことは「書く」ことに繋がり、「読む」ことは「編む」ことにも繋がる。
  • 二つのブックフェアから見えた「本の未来」

    先月は東京で二つの「国際ブックフェア」が開催された。両者を見比べて感じたことから今月は始めてみたい。 一つ目の国際ブックフェアは、9月16日〜19日に東京・北青山にある京都造形芸術大学・東北芸術工科大学の外苑キャンパスで開催された、「THE TOKYO ART BOOK FAIR」である。今年で8回目となるこのイベントには国内外から多くのアーティストや出版者(社)が参加し、キャンパス内に設けられた会場は大盛況だった。 いくつか商業出版社の出展も見受けられたが、このブックフェアは基的にインディペンデントなパブリッシャーやクリエイターが集まる祭典であり、大がかりな「文化祭」といった趣きがある。そしてなにより、国際色にあふれている。 今年の参加者の国別一覧のページをみると、日以外にオーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、チェコ、フランス、ドイツ、イタリア、韓国、メキシ

    二つのブックフェアから見えた「本の未来」
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2016/10/02
    国際性もなく、テクノロジーとも無縁で、インディペンデントな動きとも切断された、たんなる「本の安売市」。
  • 本屋とデモクラシー

    ジュンク堂書店の福嶋聡さんが人文書院のサイトで連載している「屋とコンピュータ」のコラムの2014年から2016年にかけての文章の一部と、書評その他の文章が『書店と民主主義〜言論のアリーナのために』というとしてまとめられたので、さっそく買って読んだ。 この連載のうち、「マガジン航」にも以下の文章を転載させていただいたことがあった。 書店に「生活提案」は可能か? https://magazine-k.jp/2015/12/13/no-concierge-for-bookstore/ すでにネット連載で拝読していた文章も、「民主主義」というキーワードのもとで編集された一つの著作として読み直すと、ここ数年の書店をめぐる状況がとてもよく見晴らすことができる。「民主主義」あるいは「デモクラシー」は昨年の安保法制とその憲法解釈をめぐる議論のなかで、久しぶりに再浮上した言葉だが、この間、私がこれらの言

    本屋とデモクラシー
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2016/07/02
    いろんな「本屋」があることが、デモクラシーの基礎となる。
  • 第1回 モビリティの時代のメディアを探して

    この5月の大型連休に帰省し、地元のゆるキャラやB級グルメをことさらに宣伝するPR冊子を手にとっては捨て、いつものように普段の仕事がある都会に戻ってきた人も多いだろう。よくある行政発行のフリーペーパーを見ると、そこそこの予算や人員がかかっているのに(市民の税金で)、デザインも内容も、残念なものが多い。 地域創生、コミュニティの再生が叫ばれ、地方自治体はこぞって中心市街地活性化事業や、観光客誘致を展開している。だが、多くの場合、それらは地域の経済を活性・再生することに重点が置かれている。一時の“経済”が、“地域に根ざした文化”そのものよりも優先され、人を惹きつけるデザインや地元のとっておきのストーリーを紡ぐ文章よりも、いま、地元が一押しの商品・観光資源”を前面に押し出すことが重視されてしまう。 そこには、宣伝広告とメディアの区別がない。“どんなメッセージを、誰にどのように届けるか”という一連の

    第1回 モビリティの時代のメディアを探して
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2016/05/25
    本というメディアは、それ自体が新たな経験を作るアクティブな機能を果たすこともある。
  • 対談「50年後の文芸はどうなっているのか?」藤谷治✕藤井太洋

    2016年3月5日、小説投稿サイトE★エブリスタ主催のイベント「2066年の文芸 第二夜」が、下北沢の屋B&Bで行われました。「東京国際文芸フェスティバル」の一環として行われた同イベントでは、作家の藤井太洋さんと藤谷治さんをゲストにお招きし、「50年後の文芸はどうなっているのか?」という大きなテーマについてお話いただきました。今回はマガジン航の読者の皆さまに、その一部を抄録でお届けします。 (司会・構成:有田真代) 文学とテクノロジーの関係 藤谷 藤井さんのお仕事を拝見していると、「小松左京が現役だったら、きっとこういうことを率先してやっているだろうな」と思うことがあるんです。小松左京は当時、「一桁1万円」のキャッチフレーズで売りだされた12桁の卓上計算機をいちはやく購入したり、執筆にワープロを導入するのも早かった。最先端のテクノロジーをとにかくまず使ってみて面白がった人です。文学とテク

    対談「50年後の文芸はどうなっているのか?」藤谷治✕藤井太洋
    SasakiTakahiro
    SasakiTakahiro 2016/05/03
    逆に、人が住んでいる場所には必ず本屋があるという現象が起こるのではないかと。