Y学園着任1ヶ月前の2月の夕闇。理事長面接までの待ち時間。下校する生徒たちを応接室の窓から見下ろしていたときのことを、私は今でもはっきり覚えています。どの生徒の頭髪も黒、黒、黒…。金髪どころか茶髪すらいない。 「アリの行列みたいだなあ…」 最初に赴任したA高校は進学校ながらも自由な校風があり、金髪もピアスもさほど珍しいものではなかった。T高校定時制は金髪どころか赤やら青やら信号機みたいな頭をした生徒たちがいたし、私が通っていた高校も金髪ヤンキーやガングロギャル(というのが90年代に流行った)がいた。 「染髪をしない」 この校則がしっかり機能しているいいトコの私立に、私は初めて携わることになりました。 「私立」への思い 私は公立出身の人間です。根っこのところで、私立に通う人間に対して負のイメージを抱いている。これは例えて言うなら、血統書付きの犬に僻みを持つ雑種犬のようなものです。犬の本質が