世界中の物理学者が追い求める「万物の理論」に、幾何学の力で迫る。| UTOKYO VOICES 076 大栗が科学監修を務めた映画『9次元からきた男』には、トーエ(ToE)という名の謎めいた人物が登場する。ふらりと姿を現したかと思えば、つかまえようとする科学者たちの手をすり抜け、人間が知覚できない別の次元に移動してしまう。その度にわずかな手がかりを残しながら。 ToEは、Theory of Everything(万物の理論)の頭文字でもある。自然界のすべての現象を説明できる法則のことだ。映画の中だけでなく、現実世界の物理学者たちにとってもToEは憧れてやまない聖杯。大栗自身も、ToEを探し求める一人である。 探し方にはいくつか方法がある。万物を極限まで分解し、ミクロの視点で素粒子の実体を探る量子論からのアプローチ。あるいは対照的に、マクロな視点で、宇宙のはじまりやブラックホールといった重力