【姫乃たま】『あまちゃん』で3.11を迎え、『この世界の片隅に』で8.6を迎える……生きることに向き合うとはなんなのか 子供の頃、「恵まれた時代に生まれてよかったね」と言われるたびに、憂鬱な気持ちになった。 それがなくても子供の頃は憂鬱だった。将来にいくらでも可能性があると言われるたび、どんな選択肢があるのか知らないので苛立った。大人が責任を取らなければいけないと注意されるたびに、私が何をしたら誰が責任をとることになって、具体的に何をすれば責任とやらがとれるのかわからなくて不安だった。制限された生活の中で、将来への期待をむやみに寄せられるのは苦痛だった。社会という巨大なものが頭上でもぞもぞと動いていて、子供の頃の私はその世界の片隅で為す術もなく立ちすくんでいるような気がしていた。 映画『この世界の片隅に』は、主人公のすずが広島へおつかいに出るところから始まる。まだ子供の彼女は、自分の体ほど