歴史的記録は不完全であることを宿命づけられている。個々の人間の行動をすべて記録することは不可能だ。たとえ何らかの革新によって外形的な行動が記録可能になったとしても、その意図までは、当事者が記録に残そうとしない限り残らない。歴史を研究しようとする者は飛び石のように残っている記録を慎重につなぎ合わせて行動と意図を再構成しようと挑む。当事者の述懐や文書に、その行動の意図が説明されている場合そのプロセスは省略できる…とは限らない。個人も組織も等しく、ときに大胆なまでの嘘をつくのだ。その嘘には秘密を守るためであったり、現在の外交関係を損なわないためといった理由でやむを得ずつかれるものもある。が、それと同じくらい、いやより多くは単にある個人や組織自体の面子を守るためにつかれるものである。軍隊はとりわけ威信・面子にこだわる官僚組織であってその例外ではない。何かまずい事態が起こったとき、起こった出来事自体