4月初め、アメリカでアップルのタブレット端末、iPadが発売された。発売後1週間で50万台を超える予想以上の売れ行きで、日本版の発売は5月に延期された。私もアメリカ版を借りて、使ってみた。世の中では、アマゾンのKindleに対抗する読書端末とみられているが、私の印象では、iPadは昔いろいろな大企業が試みて失敗した「マルチメディア」端末のような感じがする。 1990年代には、IBMからNTTに至るまでほとんどのIT企業が「ビデオ・オンデマンド」などのマルチメディアに巨額の投資をしたが、すべて失敗に終わった。世界を変えたのは、どこの企業も投資しなかったボランティアによる通信網、インターネットだった。初期のインターネットは、ビデオ・オンデマンドとは比較にならい貧弱な画面だったが、その自由さによって多くのユーザーが参加し、彼らが無数のウェブサイトをつくり、マルチメディアをはるかに超えるメディアに