何かの匂いを嗅いだ時に「食べたい」または「避けたい」と感じる脳の働きについての謎が、解明に向けて一歩前進した。東京大学大学院医学系研究科の村田航志(むらた こうし) 特任助教(現在は福井大学医学部 組織細胞形態学・神経科学領域 助教)、山口 正洋(やまぐち まさひろ)講師、森憲作(もり けんさく)教授(現在は東京大学名誉教授)らのチームは、マウスの大脳内の「嗅結節(きゅうけっせつ)」という部位に、経験した匂いが摂食または警戒行動につながる神経回路を見出した。 食のモチベーションは大脳内の嗅結節から 私たちは、好きな食べ物の匂いを嗅ぐと「食べたい!」と感じ、それを食べようとする。一方、焦げ臭さや腐敗臭、ガス漏れの匂いは「危険だ!」と感じ、避けようとする。面白いことに、どの匂いに魅かれるか、警戒するかは個人の経験で異なる。実は、さまざまな感覚の中でも嗅覚は、生き物の情動やモチベーション行動に直