第13回 ロックフェラー(その一) 「石油王」の誕生--- 鉄道と電信を生かす事務作業が、若かりし彼を鍛えた 石油をめぐる世界規模の興亡を記述した浩瀚な書物『石油の世紀』を著した、石油問題の世界的権威であるダニエル・ヤーギンは、日本語版前書に、かく記している。 「ところで、石油は日本にとって特別に重要な意味を持っている。二〇世紀の初頭、ロイヤル・ダッチ・シェルの創業者、マーカス・サムエルは、日本が世界の強国として台頭するにあたり金融面の支援をした。 後、一九三〇年代から四〇年代にかけて、石油の逼迫は、日本をして大東亜共栄圏の建設に向かわせることになった。東インド諸島の石油を求めて南進する要因となったのだ。そして、太平洋戦争の破局を迎える。戦後、再び石油は、日本の〝高度成長〟の原動力となった。 ・・・・・・(中略) 石油は日本にとって依然として〝選択〟を迫られる燃料であり、〝必要〟不可欠な燃