ライトノベルの歴史が振り返られる機会は意外に少ない。 ライトノベルは、戦前の少年小説や戦後間もなく刊行されはじめたジュブナイル小説などを祖として、80年代後半から90年代初頭にかけて生まれた小説の一ジャンルだ。主な読者層は10代や20代とされ、アニメや漫画などのコンテンツと密接な関係を保っている。 ライトノベルについては、ゼロ年代中期に東浩紀や新城カズマらが中心となった批評ブームは存在したものの、その流れは数年で鎮火。 それらに追随する流れとしては、大学教員の大橋崇行と山中智省らによる「ライトノベル研究会」の諸活動があったが、それも今春に刊行された『小説の生存戦略』(青弓社)を最後に解散を発表。 タニグチリウイチや前島賢らの書評によってその存在は単発的に取り上げられ続けているも、批評の文脈は完全に途絶えたといっても過言ではないだろう。 加えて、10年代に入ってからライトノベルの主流になって