ブックマーク / blog.szk.cc (6)

  • 「インスタ映え」が批判される理由――スマホレス消費の未来

    社会学者の常なのかもしれないが、僕の担当する科目のカバーする範囲は広い。たとえば大学で教えている「情報社会論」では産業構造と雇用の変化だとか情報技術と監視社会の問題だとかを扱う一方で、「グローバリゼーション論」では国際関係論や市民社会論に言及していて、受講する学生もふたつの科目でずいぶん傾向が違う。そんな科目の中でもゼミは特殊で、消費社会論を軸にしながらも、「ネットですべてが取引される時代に、情報化されない価値とは何か」という現代的なテーマに取り組んでいて、既存の科目の範囲からはやや外れる。教員の関心を中心に据えながら、学生たちが各々のテーマを持ち寄って研究するスタイルは一般的な研究室の運営方法ではあるけれど、それだけに外部の人に説明しづらいところもあって、年に一度くらいは研究したことをまとめてみないといけないプレッシャーがある。昨年の「体感消費とは何か」というエントリはそのために書かれた

    「インスタ映え」が批判される理由――スマホレス消費の未来
  • 体感消費とは何か

    消費というものに着目したときに、この数年の間に起きている現象はとても興味深いものが多い。一方に目をやれば訪日外国人の旺盛な消費意欲やハロウィンなどのイベント消費があり、他方では「若者の消費離れ」だとか「ミニマリスト」のように、消費しないことが現代の特徴に挙がる場合もある。もちろんどちらも現代のいち側面を表しているのだろうけれど、消費するにせよしないにせよ、その背後にどのようなメカニズムがあるのかは、あまり取り上げられることがない。 自分自身はこの数年、消費社会論を軸にしながらテーマパークやショッピングセンター、観光、といった対象を扱ってきた。こうした消費は、近年「コト消費」などと呼ばれ、モノの消費ではなくて体験が消費価値の中心になっていると言われている。僕としてはその背景に、ネットで情報があふれるようになったことで、行かないと分からない、体験しないと分からないことを消費するマインドが顕在

    体感消費とは何か
  • 希望の時代の中で―『シン・ゴジラ』雑感

    少なくとも周囲では話題だし、期待もしていたのでさっそく『シン・ゴジラ』を鑑賞してきた。「館長庵野秀明 特撮博物館」にも何度か足を運び、「巨神兵東京に現わる」を会場で何度もリピートした経験があったからか、この映画を通してしたかったこと、撮りたかった絵に対する切実さがすごく伝わるものだった。たぶんあのカットやこのカットがスクリーンに投影されていれば満足という向きもあると思うので「考察」みたいな無粋な真似はするべきじゃないと思うのだけど、他方で真面目に「社会派映画」として見る向きがあることも確かなので、その点も含めややネタバレを含む感想を。注意しておくとストーリーなどの詳細な解説はしないので、見に行くかどうか迷ってこの記事にたどり着いた人には、未見の人はマジで劇場に足を運んだ方がいいと思うってことは伝えておきたい。 さて、作品を見ながら真っ先に思い出していたのは『パトレイバー the Movie

    希望の時代の中で―『シン・ゴジラ』雑感
  • 「ポケモンGO」を社会学的に考えるためのヒント

    以前から話題になっていたポケモンのキャラクターを用いた位置情報連動ゲーム(位置ゲー)である「ポケモンGO」が欧米でリリースされて1週間ほどが過ぎた。巷ではポケモンゲットに熱中する外国人や、関連株の値上がり、いわゆる「ポケモノミクス」についての話題でもちきりだ。日でも同作がリリースされれば海外のような、あるいはそれ以上の熱狂が起きるはずだと当て込んだ人々の落ち着かない動きも、こうした話題への注目に拍車をかけているようだ。 むろん、ポケモン関連市場は国内において非常に大きいから、リリースされればなんらかの動きはあるだろう。一方でまだ同作をプレイしていない僕には、それがコロプラからイングレスまで連なる「位置ゲー」の特徴や課題を共有するものであると見えるし、やや距離を置いて見ていたい気持ちになるところがある。ひとまずこのエントリでは、「ポケモンGO」に限らず、こうした技術が社会に拡がることはどう

    「ポケモンGO」を社会学的に考えるためのヒント
  • グリモアについてネタバレ含みで考察する

    どうやら『グリモア(私立グリモワール魔法学園)』のテレビコマーシャルが始まるらしい。昨年末のブログでも取り上げたとおり、僕はこのゲームというか作品をとても気に入っていて、色んな人の前で「グリモアはいいぞ」という話をしているのだけど、実はあまりユーザーが増えることを期待していない。というのも、これも以前に書いたとおりこの作品はストーリーの部分がキモであり、以前のイベントの出来事などを知らずに始めてもゲーム性だけで楽しめる、というものじゃないからだ。 そんなわけで、誰に頼まれたわけでもないけれど「グリモア」について少しだけストーリー解説を含めた世界観の考察をしてみたいと思う。一部について盛大にネタバレすることになるけれど、知らないことには始まらないだけでなく、イベントをクリアしていなくても出てくる会話などで言及されるものも多いので、これはもう仕方ないかなということで。 人類を脅かす「霧の魔物」

    グリモアについてネタバレ含みで考察する
  • 反抗なきロックの時代

    若い時分、僕の周囲にはロックミュージシャンしかいなかった。アマチュアからベテランまでたくさんの人たちと関わって、たとえば「ミュージシャン」と「芸能人」の間にある微妙な差だとか、フリーランスの演奏家として生きていく彼らの職業意識だとか、そういうものを学ばせてもらっていた。概して彼らは低姿勢だったけど時によっては「ロック」な立ち居振る舞いで、彼らの語る70年代や80年代の武勇伝を聞きながら、さすがにビール瓶で頭を殴られて流血こそしなかったものの、これでも時代はマシになった方なのだろうな、と感じていたものだ。 いいとか悪いとかの話ではなく、それはある環境が生み出した生き方だったのだと思う。そして、産業化され、大きな市場になっていた90年代の音楽シーンにおいては、衝動的な自己表現が溢れた結果としてのロックの居場所は、かつてよりは小さくなっていた。「マス」という存在を意識できる演奏家たちは、その変化

    反抗なきロックの時代
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