公的資金を活用して一般企業に資本注入する異例の緊急措置の適用第1号に半導体大手のエルピーダメモリが決まった。「日本のハイテク産業を支える半導体メーカーはつぶせない」という“国策”支援だ。だが、その舞台裏では復権をもくろむ経済産業省と、財務省の意向が透けて見える日本政策投資銀行(政投銀)、それにリスクを官に押し付けたい民間銀行の3者が、ドロドロの駆け引きを繰り広げていた。三者三様の思惑が交錯し、足並みは乱れたまま。エルピーダ再生の前途は多難だ。 見切り発車 民間銀行担当者「損失が出れば政府が8割も補填(ほてん)してくれるのに、300億円の出資だけというのはおかしい」 政投銀担当者「昨秋に民営化したばかりで、厳格な審査基準は崩せない」 6月下旬の都内某所。三菱東京UFJ、三井住友、みずほコーポレート、住友信託の4行と政投銀の担当者の協議は難航を極め、平行線をたどったまま日付が変わった。