いま求められているのは、これまでの常識から距離を取り、前提条件にとらわれずに解決策を見いだす思考だとアトキンソン氏は言う。そこで本書においてもさまざまな角度からこの問題に斬り込んでいるのだが、特に興味深いのは第5章「最低賃金を引き上げよ」から第6章「生産性を高めよ」につながる流れだ。 第5章で「世界経済の成長が『生産性向上』に依存するようになりつつあるからこそ、最低賃金を引き上げれば生産性をつり上げることができる」ことを示したのち、第6章では、日本における「賃上げ」の重要性を説いているのだ。 根底にあるのは、人口減少・高齢化に対応するためには、全企業が賃上げに向かうことが不可欠だという考え方である。 問題は、経営者をどう動かすか これからは高齢化によって、無職の人が激増することになる。つまり、彼らの年金を払う予算が必要になってくるわけだ。それだけではない。高齢者だからこそ医療負担も大きいた