「企業にとって安くて使い勝手のいい働かせ方によって、若者をはじめとする貧困が拡大している」と主張する知識人や政治家が多いが、このような文脈のなかで使われる「企業」というのは、いったい誰なんだろうと、時々思う。 彼らはターゲットをわかりやすくするために、経営者=企業とみなし、経営者を批判する。しかし、私利私欲のために経営を行う一部の経営者を除き、企業全体のために様々な策を弄することが経営責任であると自覚している経営者が多い。その企業全体のなかに無数の社員が所属し、無数の家族の生活がある。すなわち、パートやアルバイトを、安くて使い勝手のいい働かせ方で雇用する意志は、そこに所属する無数の正社員と家族の潜在的願望であるとも言える。自分の給与を削ってパートやアルバイトの待遇を良くするように要求する正社員など皆無だろうから。 企業が空前の利益をあげているという批判もあるが、その利益を誰か特定の個人が好