Q,最近、宗教の入門書や僧侶のエッセーが数多く刊行され、なかでも『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)はベストセラーとなりました。宗教に関する書籍がよく売れているのは、なぜなのでしょうか。また、このような状況をどう評価されますか。 A,冷戦体制の終結から約二〇年が経過し、左翼か右翼か、社会主義か自由主義かという軸で政治を判断することが難しくなりました。そうした変化を背景に、今後の世界の趨勢を見極めるためには、宗教に関する何らかの理解が必要だ、と感じている人が増えつつあるのではないでしょうか。最近よく売れている宗教関連の書籍は、社会からのそうしたニーズに応えようとしているのだと思います。 しかし、一つ問題に感じられるのは、それらの書物の多くが、各宗教の専門的研究者によって書かれたものではないという点です。橋爪大三郎氏と大澤真幸氏の『ふしぎなキリスト教』を私も一読したところ、よく言われている