宮城、岩手両県の震災がれきを被災地以外で処理する「広域処理」の大半が、来月末で打ち切られる。必要量が当初の推計の6分の1にまで激減したためだ。受け入れ先では放射能汚染への不安にとどまらず、税金の無駄遣いが指摘され、北九州市などでは訴訟にも発展した。大阪では警察の介入が問題視された。東北の地元にも反対意見が強く、旗振り役の環境省は早期撤退に追い込まれた形だ。 (佐藤圭) 【こちらは記事の前文です】 記事全文をご覧になりたい方は、東京新聞朝刊または、携帯電話の有料会員サービス「東京新聞・東中スポ」をご利用ください。 東京新聞は、関東エリアの駅売店、コンビニエンスストアなどでお求めいただけます。 購読・バックナンバーをご希望の方は「新聞購読のご案内」をご覧ください。 掲載日やキーワードから記事を探す「記事検索サービス」もご利用ください。
東京電力が二十三日に新たに公表した福島第一原発事故をめぐる社内のテレビ会議映像で、東電は建屋にたまった高濃度汚染水が、海に漏れる危険性を知りながら、汚染水による作業員の被ばく対応などに追われ、漏出防止対策を後回しにしていたことが分かった。 今回公開されたのは、二〇一一年三月二十三~三十日と四月六~十二日の映像。これまで二回の公開分と合わせ、事故後一カ月間のやりとりがそろった。 会議の映像を分析すると、東電は三月二十日前後は、使用済み核燃料プールに向け大量に放水される水が、建屋などに付いた放射性物質を洗い流し、海に流れ込む可能性を非常に気にしていた。 しかし、二十四日に3号機タービン建屋地下で作業員らが高濃度汚染水で被ばく。汚染水の分布調査や、増え続ける汚染水の移送先の確保に追われた。 その後、放水口近くの海水から高濃度の放射性物質が何度も検出され、海への漏出防止策に注力する転換点はあったが
環境副大臣として東京電力福島第一原発事故で発生した「指定廃棄物」の最終処分場の選定を指揮してきた横光克彦氏が三日、内閣改造で退任した。栃木、茨城両県の候補地で反対運動が広がる中での責任者交代に、関係者からは懸念や不満の声が上がっている。 横光氏は栃木、茨城のほか、処分場を計画している宮城、群馬、千葉の計五県を訪ね、説明を重ねてきた。九月に栃木県矢板市と茨城県高萩市を候補地に選んだが、事前に地元と協議せずに結果だけを伝える手法が「上から目線」「寝耳に水」との批判を招いた。 環境省は住民説明会で安全性などの理解を求めていく構えだが“交渉の顔”が交代することになり、同省幹部も「影響は否めない」とこぼす。 矢板市の反対運動組織の江部和栄副会長(68)は「党内事情による交代ではなく、留任の道はなかったのか。(横光氏が)言ってきたことに責任がなくなるのではないか」と懸念を示す。高萩市の草間吉夫市長も「
東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所の低レベル放射性廃棄物を処理する焼却施設設置計画をめぐり、住民有志代表の寺門博孝さん(60)は、同社社長宛てに安全や住民への十分な説明を求める要請書を手渡した。一九九九年の同社臨界事故から十三年。寺門さんは今も「JCOの隠ぺい体質は変わらない」と訴える。 (林容史) 寺門さんは臨界事故を起こした転換試験棟(現第三管理棟)から約三百五十メートル離れたところで、輸入農作物の卸販売業を営む。臨界事故では、家族と一週間、自宅にこもり、息を潜めて暮らした。事故による風評被害で顧客も遠のき、一億七千万円あった年間の売り上げは事故後、七千万円に落ち込んだ。 二十四日に要請書を出した寺門さん。核燃料のずさんな管理が事故につながっただけに、JCOへの不信感はぬぐえない。JCOは焼却施設設置を「更新で新増設には当たらない」として、県と村に原子力安全協
野田内閣が「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」を目指す戦略の閣議決定の是非を判断する直前、米政府側が閣議決定を見送るよう要求していたことが二十一日、政府内部への取材で分かった。米高官は日本側による事前説明の場で「法律にしたり、閣議決定して政策をしばり、見直せなくなることを懸念する」と述べ、将来の内閣を含めて日本が原発稼働ゼロの戦略を変える余地を残すよう求めていた。 政府は「革新的エネルギー・環境(エネ環)戦略」の決定が大詰めを迎えた九月初め以降、在米日本大使館や、訪米した大串博志内閣府政務官、長島昭久首相補佐官らが戦略の内容説明を米側に繰り返した。 さらに米側は「二〇三〇年代」という期限を設けた目標も問題視した。米民主党政権に強い影響力があるシンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)のクローニン上級顧問は十三日、「具体的な行程もなく、目標時期を示す政策は危うい」と指摘した。これに対して、長
東京電力福島第一原発事故で、ベント(排気)配管の安全装置がベントの妨げとなり、炉心溶融の大きな原因をつくっていた問題で、装置の仕様を検討する際、事故早期の段階でベントすることを想定していなかったことが分かった。
東京電力の保有する東京電力病院(東京都新宿区)が、稼働率が低いにもかかわらず、社員やOBの専門病院として一般患者を診療していないことが分かった。病院の運営には東電からの助成が入っているとみられ、一兆円の公的資金を受けながら、過大な福利厚生施設を維持することに批判も集まりそうだ。二十七日の株主総会で、東京都の猪瀬直樹副知事が指摘した。 一九五一年に東電社員らの健康管理を目的とする「職域病院」として開設。現在の診療科は内科や外科、整形外科、眼科など九科で、受診は社員やOB、その家族に限られている。 病床は百十三床あるが、現在の入院患者は二十人ほどで、稼働率は二割未満。東京都が二〇〇九年に定期監査に入った当時も百九十二床の設置許可を受けながら、六十人余りしか入院しておらず、ベッド数を減らすよう指導していた。 病院は七階建てで、敷地面積は五千四百平方メートル。JR信濃町駅から徒歩五分、慶応大学医学
今夏の電力需給を点検する政府の需給検証委員会(委員長・石田勝之内閣府副大臣)の初会合が二十三日に開かれ、沖縄電力を除く電力各社が需要見込みと供給能力を報告した。各社は、二〇一〇年並みの猛暑となり原発が稼働しない場合、家庭や企業で冷房の使用を抑えるなど節電効果を考慮しても八月のピーク時に六十六万キロワット(0・4%)の電力が全国で不足すると推定した。委員からは、過去に電力使用のピークが各社で同じように続くことがほとんどないことから「丼勘定の議論はやめるべきだ」と、批判する意見が出た。 原発依存度が高い関西電力は、不足する供給電力が約五百万キロワット(16・3%)になると見込んだ。北海道電力は3・1%、九州電力は3・7%不足すると報告した。 報告に対し、専門家として出席した「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は「節電の手段は数多くあるのに政府も関電も検討していない」と批判。関電の報告に対
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題をめぐり、独立行政法人日本原子力研究開発機構労働組合(東海村)は「拙速な原発再稼働に反対」とする声明を今週にも原子力安全・保安院など政府機関や県、東海村、福井県おおい町などに提出する。 組合員は全職員約四千人のうち原子力研究者や技術者など二百八十人。声明では「ストレステストは原発の安全確認からはほど遠いものである」と批判。さらに「原子力関係者の立場では(東京電力福島第一原発事故の)本質的な問題解明と将来に向けての考え方をつくっていくことが被害の軽減の次になすべきこと」とし、「広範な放射能汚染で国を危機に陥れるようなものは運転すべきではない」と主張している。 同組合は原子力の基礎研究や安全性研究をしてきた旧日本原子力研究所の労働組合の流れをくむ。声明について組合の岩井孝委員長は、事故原因すら分からず、科学者としての議論も進んでいない現状
原子力を研究する大学の学科や大学院の専攻に今春入学した人は、東京大など七大学の合計で昨年より16%減少、最大71%減った大学もあったことが共同通信の集計で十六日、分かった。東京電力福島第一原発事故で関心が高まる原子力だが、文部科学省は「将来性が不安視されているのではないか」としている。 脱原発が進む場合でも、福島第一原発などの廃炉作業、放射性物質の除染技術開発、既存原発への対応など、メーカーや電力会社などで原子力分野に携わる人材は必要だが、今後確保が困難になる可能性がある。 集計対象は、「原子力」「原子核」などの名称が入った学科や大学院の専攻を入学時に選択できる東京大、京都大、福井大、早稲田大、東京都市大、東海大、福井工業大。 今春新設された長岡技術科学大や「今後公表する」と回答した東京工業大は除いた。東大は入学者数を回答しなかったため合格者数を集計対象にした。 七大学の対象の学部、大学院
東京電力福島第一原発1号機の原子炉建屋が水素爆発した昨年三月十二日、首相官邸で開かれた原子力災害対策本部の会合で、福島県だけでなく、東京都や茨城県も含めた広域避難が必要になるかもしれない、と議論していた。十三日、本紙が情報公開請求で得た政府のメモ書きなどから分かった。 このメモは、十二日午後十時七分から開かれた第四回会合の発言をまとめたもの。この日は午後三時半ごろに1号機原子炉建屋で水素爆発が起き、3号機でも緊急冷却装置が不安定な動きをみせるなど、深刻な状況が相次いで起きていた。 会合では、玄葉光一郎国家戦略担当相(当時)が「最悪の事態想定を」と求めると、菅直人首相(同)が「チェルノブイリ型(の放射能汚染)はありえるのか」などの懸念を示した。菅氏は福島第一は原子炉の形式が全く異なるとの説明に納得はしたが、とにかく格納容器を守り抜く重要性を強調した。
東京電力は五日、福島第一原発の汚染水処理システムの配管から高濃度のストロンチウムなどを含む汚染水十二トンが流出したと発表した。配管のホースがつなぎ目から抜けたのが原因。汚染水は排水溝を通って、ほとんどが海に流れ出た可能性がある。 東電によると、汚染水が漏れたのは、放射性セシウムの大半を除去した後、淡水化装置で濃縮された塩水。ストロンチウムは取り除かれていない。 周辺では昨年十二月に〇・一五トン、今年三月に〇・〇八トンの汚染水が漏れて海に流出。三月の汚染水のストロンチウムなどの濃度は一立方センチ当たり一四万ベクレルで、今回も同程度とみられる。周辺の海水の調査では、放射性セシウムは検出されず、ストロンチウムはまだ測定結果が出ていない。 装置は五日午前零時十分ごろからの一時間で四回、水量増加の異常を感知して自動停止した。ところが、最初の三回はそのたびに作業員が遠隔操作で再起動。午前一時十分、四回
藤村修官房長官は5日午前の記者会見で、定期検査により停止中の原発の再稼働に関し、地元の同意は必ずしも前提条件にならないとの認識を示した。「法律などの枠組みで同意が義務付けられているわけではない」と述べた。これまで原発の再稼働には地元の同意が必要としてきた姿勢を軌道修正した形で、原発の地元や周辺自治体などの反発は必至だ。 政府は、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に向けた手続きを進めているが、周辺自治体が反対・慎重な立場を崩していないためとみられる。法律上の「同意」は不要との立場を強調し、再稼働実現への地ならしを図る狙いがあるようだ。
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