家族のあり方の多様性について見直されつつある昨今、第三者の精子による人工授精(AID)は不妊で悩む人にとって一つの希望となりうる。だがAIDは広まるどころか、減少傾向にある。不妊治療の専門家で、日本生殖医学会認定医の柏崎祐士氏は話す。 「自分の出自を知る権利が世界的に認められてきており、日本でもその方向で議論が進んでいます。この流れを受け、’17年に国内でAIDの約半数を手掛けていた慶應義塾大学病院がドナーとの同意文書に、『生まれた子が情報開示を病院に求めた場合、応じる可能性がある』旨を明記したところ、提供者がいなくなった。扶養義務を負う可能性が出てくるためです。以降、慶應義塾大学病院はドナー受け入れを中止しました」 そして日本産科婦人科学会などでは、生殖医療はがん治療などで生殖機能に問題を抱える人や戸籍上の夫婦に限定し、同性愛者への提供は原則行っていない。こうした背景から、SNSを介した