絹と言えばシルクの布としてもおなじみですが、絹糸は手術の縫合糸など他にもいろいろな場面で使われています。通気や透湿に優れ、肌とよくなじむことに加えて、細さの割に優れた強靭さが、絹糸の特徴です。 このように、ただでさえ十分な魅力を持った繊維である絹糸ですが、これを凌駕する新材料、クモの糸について、画期的な手法が開発[1]されたため、ここに紹介します。 しなやかで強靭なクモの糸 クモの糸は、クモの生活を支える命綱であり、きわだった機械特性を持ちます[2]。クモの糸を束ねて作った直径3ミリメートルのひもで、体重66キログラムのヒトをぶらさげることができると言いますから、ずいぶんタフな素材です。芥川龍之介『蜘蛛の糸』に登場するカンダタが、もしこのことを聞いたら、きっと悔しがることでしょう。 強さだけではなく、クモの糸はしなやかさをあわせ持つ驚くべき素材です。強度の高い鉄鋼を使ってバイオリンは作れま