今日の私達はかなり単純で、軽薄な価値観や歴史認識に取り巻かれている。その一つは「成功することがこの世での最高の価値である」というものだ。これをしゃれた言葉で言えば「アメリカン・ドリーム」ということになろうか。この価値観は、一旦、失敗したり、挫折したりすると、容易に「自己否定」「自虐史観」に変わってしまう性質をもっている。要するに、「結局は失敗したんだから、すべては無駄だった、間違いだった」と。 西郷隆盛は、つい最近まで、多くの日本人の心を捉えてきた人物なのだが、「成功が全て」という価値観に立つと、その人気の理由が理解できない。たしかに、大まかに見れば、前半生は「大成功」だったとも言えるが、後半生、特に最後は悲劇である。だから、「成功が全て」という価値観では、西郷さんに対する根強い人気の秘密は分からない。 しかし、少し立ち止まって考えてみると、私達の先祖は「善か、悪か」「成功か、失敗か」「有