それは遠い昔、私がまだaikoを熱心に聴いておらず、ヒットチャートをにぎわす有象無象の一人だと思い込んでいた頃、私はaikoに対して、「いつも前髪を切りすぎている女」というイメージを抱いていた。 なんとなく存在を耳にしただけの状態でも、人は有名人にボンヤリとしたイメージを抱くもので、aikoの場合、それが「いつも前髪を切りすぎている女」だった。 「aiko? 『カブトムシ』とか『花火』の人でしょう? あんまよく知らないけど、なんかあの人、いつも前髪切りすぎてない?」 しかし、熱心に聴くようになって気付いたのだが、aikoが実際に前髪を切りすぎているのは『シャッター』の一曲だけだった。 切りすぎた前髪 右手で押さえて 少し背を向けた 嫌われたくないから 『シャッター』 これはシングル曲でもないし、当時の自分が耳にしているはずはないから、何がどうなって、前髪を切りすぎているイメージが自分の中に