京都大学産官学連携本部客員准教授・瀧本哲史 これまで、産経にエールを送ってきたので、今回はあえて苦言を呈したいと思う。 東京都町田市の教育委員会が北朝鮮をめぐる社会情勢などを理由に朝鮮学校の児童に防犯ブザーを配布しない決定をしたことをうけ、6日付の産経抄はこれを「当たり前」と評した。最終的に町田市は決定を撤回し、防犯ブザーを送付した。普段の論調において、朝鮮学校への支援に対して疑問を呈するのは産経の戦略であろうから、それ自体は批判しない。ただ私は、ブザー配布中止に賛成するのは、長期的な国益という点で得策ではないのではないか、保守論壇をリードしようとする産経であれば、もっとよい戦略を提示できたのではないかと残念に思うのである。 そもそも、北朝鮮による国際法違反行為は、ブザーを受け取る児童たちには何の責任もない。親が不法な政治体制を支持しているからといって子供を罰するのは、近代国家の原則に反す