その女の子は、マドンナと名乗った。 「綽名じゃないの?」と確かめると本名よと答えたが、あとで母親か伯母らしき人が「マルヤム」と呼んでいたので、どちらが綽名でどちらが本名なのかは分からない。本人もまだ英語はおぼつかなく単語を並べる程度、こちらの質問もどれだけ通じていたかは分からない。まだ12歳なのだ。 姉と一緒に山道を歩いているところにわたしが追いついたのが出会ったきっかけだった。宿が同じだったので、厳密には初対面というわけではない、夕食は同じ大食堂で取った。だからお互い顔はなんとなく覚えていた。 どこからきたの、と英語で訊くとイスラエルからと英語で答えた。パレスチナ自治区からなのだ。パレスチナ自治区に住む、アラビア語を話すキリスト教徒なのだ。でも彼らの認識では彼らはイスラエルから来たのであった。そのことが面白かった。姉のマルセルは20歳でテルアヴィーヴの大学に通っている。綺麗な英語を話した