暴風神父の憂鬱 テレビのクイズ番組やヒューマン・ドキュメンタリーで何回か取り上げられたこともあるので、すでにご存知の方もいらっしゃると思うが、メキシコの覆面レスラーにフライ・トルメンタという変わり種がいる。一般にメキシコでは、覆面レスラーは「善玉」とのお約束事があるらしい。侵略者スペイン人を象徴する悪役白人レスラーに対して、由緒正しきマヤ・アステカ・インカ文明のモチーフを凝らした覆面をまとったレスラーが、メキシコ流プロレス(ルチャ・リブレ)特有のアクロバチックな空中殺法で戦いを挑み、彼らを撃退するストーリーがウケるのである(1)。しかしフライ・トルメンタは単なる善玉ではない。日本語名「暴風神父」というリングネームもそのままに、彼の本職は神父なのである。右の頬を打たれれば、左の頬を差し出せというキリスト教の教えを説く神父がプロレスをやったら、ボコボコに殴られるだけではないかと考える人はまだま